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【仙台フォーラムまとめ後編】先進事例とパネルディスカッションから導く、サステナブルな観光を「実践」に移すリアルな方法論

一般社団法人JARTAが主催した「持続可能な観光地域づくり 実践的シンポジウムin仙台 ── 観光を『地域マネジメントの手段』として捉え直す」。

基調講演を収めた前編に続き、後編となる本記事では、全国各地から集まったフロントランナーたちによる事例講演と、総勢7名が登壇したパネルディスカッションの模様を通じて、サステナブルな観光を“実践へと落とし込むための具体的な方法論”をお届けします。


■ 【事例講演】明日から実践できる、4つのリアルなモデル

本セッションでは、各分野の第一線で活躍する登壇者から、具体的な数値や現場の経験に基づく取り組みが共有されました。いずれの事例も、「理念」を「実装」へと転換するヒントに満ちています。

① 認証を“経営プロセス”として活かす:地域経済循環モデル

株式会社北海道宝島旅行社の鈴木 宏一郎氏は、2021年に国際認証「Travelife」のPartnerレベルを達成した経験をもとに、認証の本質的な価値を語りました。

それは、単なる“取得”ではなく、段階的な改善を積み重ねるプロセスそのものにあるという視点です。例えば、富裕層向けツアーにおいてCO2オフセットを実施するなど、環境配慮と収益性を両立。さらに連泊を促進することで、地域への経済還元を高める仕組みを構築しています。


② 選ばれる地域になるための必須条件:アドベンチャーツーリズム(AT)と国際基準

北海道アドベンチャートラベル協議会の荒井 一洋氏は、自然・文化・ガイドが一体となった高付加価値体験の設計について解説しました。

特に欧米市場においては、「サステナビリティに対応していない地域は、そもそも選ばれない」という厳しい現実が存在すると指摘。感覚的な取り組みにとどまらず、データ収集やモニタリングを通じた継続的な改善が不可欠であると強調しました。


③ 観光地に頼らない価値創出:面的分散と日常の観光化

株式会社ライダスの井上 寿氏は、サイクルツーリズムを軸とした地域づくりの可能性を提示しました。

高付加価値型のサイクリングツアーや長期滞在の取り組みにより、有名観光地への集中を避けつつ、地域全体に経済効果を広げる“面的分散”を実現。さらに、日常の風景や生活そのものを観光資源として捉えることで、地域への負荷を抑えながら新たな魅力を創出するアプローチが紹介されました。


④ 地域主体で人材を育てる:持続可能なツアー開発

株式会社穴吹トラベルの阿部 有香氏は、四国における少人数・高付加価値のプライベートツアーや、1,200kmに及ぶお遍路企画を紹介しました。

地域の回遊性を高める「動線設計」の重要性を示すとともに、深刻化するガイド不足への対応として、60代からの地域ガイド育成など、地域内で人材を循環させる独自のモデルを提案。観光の持続性は“人”によって支えられることが改めて示されました。


■ 【パネルディスカッション】“なぜ・どうやるか”を乗り越える

後半のパネルディスカッションでは、モデレーターに西谷 雷佐氏(株式会社インアウトバウンド東北)を迎え、事例講演の登壇者4名に加え、JARTA高山代表理事、久保 竜太氏(サステナビリティ・コーディネーター協会)が参加。総勢7名による実践的な議論が展開されました。

西谷氏は、「サステナビリティの“理解”は進んでいる一方で、それを“行動に移す方法”に課題がある」という問題提起を行い、会場からの質問を交えながら議論が深められました。

写真左:西谷氏、写真右:久保氏


1. 自治体・DMO導入の第一歩:ハードルを下げる“自己診断”

「地域ごとの温度差やリソース不足にどう向き合うか」という問いに対し、高山代表理事は、「いきなり高度な認証を目指す必要はない」と明言。まずは20項目程度のチェックリストによる“自己診断”で現状を可視化することが有効であると提案しました。

また、久保氏は、四国の事例を踏まえ、「トップダウンの政治的リーダーシップと、現場の熱量によるボトムアップ、この両輪が不可欠」と指摘。さらに、全体を一度に動かそうとするのではなく、先行事例を“魅力的に見せる”ことで広げていく戦略が有効であると整理されました。


2. ビジネスとの両立:観光を「経済政策」として再定義する

収益性とサステナビリティの両立というテーマでは、阿部氏が「理想的な取り組みと収益事業をあえて分けて運営する」という現実的なアプローチを提示しました。

また西谷氏は、観光政策を単なる体験づくりではなく「地域全体を動かす経済開発政策」として捉え直す視点を提起。これにより、投資の呼び込みやパートナーシップ形成が進み、地域としての競争力が高まる可能性が示されました。

会場からは熱い質問が飛び交いました。


3. 日本らしさを強みに:文化とサステナビリティの融合

ディスカッションでは、日本に根付く価値観にも注目が集まりました。
「掃除」「助け合い」「他者への配慮」といった日常の行動規範は、まさにサステナビリティの本質そのものです。登壇者からは、こうした文化的価値を再認識し、体系化して発信することの重要性が指摘されました。また、環境配慮を“義務”として押し付けるのではなく、旅行者が「楽しいから選ぶ」ような体験として設計する——そのためのマーケティング視点の必要性も共有されました。


■ 結論:小さく始め、楽しみながら続ける「ジャーニー」へ

セッションの最後には、登壇者から共通のメッセージが送られました。

「サステナビリティは、完璧を目指して立ち止まるものではありません。小さく始め、段階的に改善し続ける“ジャーニー(旅)”です。」

トップを巻き込みながら、そして何より自分たち自身が楽しみながら取り組むこと。
その積み重ねが、持続可能な観光を現実のものにしていく——参加者の多くが、明日からの一歩を具体的に思い描く、力強い行動喚起とともにシンポジウムは幕を閉じました。

 


■ おわりに

全2回にわたってお届けした「持続可能な観光地域づくり 実践的シンポジウムin仙台」のレポートは以上となります。前編となる【基調講演レポート】もあわせてぜひご覧ください。

JARTAは、本シンポジウムでの新たなご縁を通じて、今後も全国の地域・事業者の皆さまとともに、サステナビリティへの理解を深めながら実践を積み重ねてまいります。

サステナブルツーリズム全般のセミナー実施や各認証制度に関するご相談は、JARTA公式ウェブサイトよりお気軽にお問い合わせください。